あれは4年前の全日本選手権の決勝戦だった。2年連続日本一を狙う貴男と3度目の日本一を狙うストローカーの増田健太郎との戦いである。

素晴らしくセンスのいいサービス&ボレーヤーという印象だった。サーブもけっこう早く、流れるようなサービス&ボレー。しかしストロークの安定感は今一つという感じだった。

貴男のストロークは安定している。この2年間イタリアのクレーコートで練習している成果が現れている。

気がつくと試合は中盤第5ゲームにさしかかっていた。

貴男のサーブ。少し気負いがあるのか、ファーストサーブが入らない。セカンドサーブで果敢にネットを取る貴男だが、チャンのリターンも徐々にタイミングが合ってきている。積極的にネットを取るがチャンのパッシングの餌食だ。

最初にサービスを落としたのは、貴男だった。3−2でチャンのリード、試合はお互いのキープが続き、気がついてみれば4−5で貴男のビハインド。第一セットの第10ゲーム、チャンのサーブだ。振り返ってみれば、この試合のターニングポイントであった。
果敢にリターン&ダッシュを試みる貴男。おもしろいようにボレーが決まる。
崖っぷ地で、貴男はチャンのサービスをブレイクした。これで試合は振り出しに戻った。

お互いのキープで、ついにタイブレイクに突入。タイブレイクでの貴男は素晴らしかった。強気のサーブが炸裂する。
タイブレークでのビッグサーバは有利だ。まるで勝ったかのような雄叫びを上げる貴男。
第一セットは7−6(3)で貴男が取った。

第二セットは流れに乗った貴男の独壇場だった。5−2で迎えた第八ゲーム。ラストゲームになるか、サーブは貴男だ。

最初の1球はセンターに目の覚めるようなフラットサーブが突き刺さった。チャンは身動き一つできない。エースだ。二球目はワイドに思いっきり叩き込んだ。チャンはやっとボールに届くがフレームにしか当らない。スコアは30−0だ。
日本人のサーブとは思えない圧倒的なパワーとスピードだ。

3球目、またもエースと思ったが僅かにフォールト。次はこのゲーム始めてのセカンドサーブ、チャンとしてはなんとかして、流れを変えたい、「次の一発で貴男の流れを止めたい」肩の力からそれが感じられる。しかしチャンの強烈なリターンはアウト。40−0マッチポイントだ。場内は「貴男コール」おもわず一緒になって貴男!貴男!と叫んでしまう。

次のサーブはセンターか、ワイドか、はたまたボディー狙いかと思いを巡らせているうちに、チャンのリターンはネットに引っかかっていた。
終わってみれば6−2で貴男の圧勝だった。

1988年の松岡修造以来、13年振りのベスト8進出・・・

いける、いける、もっと上にいけるはずだ!しかし、貴男にはもう時間があまりない。あと4〜5年か。この2年間、怪我に悩まされた貴男だが、来年は100位以内に必ず入れる。イタリアでのトレーニングがきっと実を結ぶと信じている。

オールラウンドプレーヤーに憧れるが、やはり誰にも負けない武器が必要と感じたJapan Openであった。

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